「……居る」
「……ああ」
アルケミストの旅人が小さく呟くと同時、レンジャーのトーンも周囲を警戒し始める。
パーティ内でも慎重派の二名の様子に、仲間達も気を引き締める。
「一体何が居るって……っ!!」
「リィ、一体どうしたん?何か……!?」
「リィ?アーリィ?一体……これは……!?」
迫り来る気配の大きさは、間違いなくこれまで戦った相手の比ではない。
この気配に比べれば角鹿や野牛など子供の様な物だ。
「……補足されたか」
「だが、鈍い。振り切るぞ」
二人の先導で、何とか隣接する部屋への扉を潜る。
背後に迫ってきていたのは巨大なカマキリの影。
「全てを刈る影」そう呼ばれた魔物の存在が、この階層の名の由来なのだろうか。
そう考えつつ、通路際に陣取る一体を避けて進み……熟練冒険者の2名に出会った彼ら。
町にてスノードリフトなる魔物の討伐を請け負い、鍛練を重ね……。
「そいつに勝つなら、あの野郎もぶっ倒さないとなぁ……」
「……確かに。あのカマキリに勝てぬならまだまだ、だろうな」
「なら……リベンジやな?」
3人が何処か獰猛な笑みを浮かべ、意欲を燃やす。
「危険そうではある、が……」
「一理ある。どのみち恐れてばかりでは行けないさ」
慎重派二名も頷き、万全の準備を整えて。
彼らは「全てを刈る影」を狩らんと戦いを挑む……!
「くそっ、固いっ!」
「それに一撃が重い……防御陣形を崩すなっ!」
「回復がおいつかへん……ギリギリやっ!!」
「弓も効かんか……術式だけが頼りだ、頼む!」
「……術式、展開……凍れ……!」
炎に弱い相手を火の術式で削り……とどめに強力な一撃を叩き込む。
氷結の術式を受けた敵は、大きく腕を振り上げると、ゆっくりと倒れていった。
……撃破、成功。討伐の証である鎌を入手し、じわじわと探索域を広げる。
4Fにて狼の群れも駆逐した……だが、まだ武具などに不安が残る。
「しばらくは、この階層を拠点にしよう……」
旅人の提案に従い、彼らはしばし探索を続ける事にしたのだった。
PR