「という訳で枯れ森にやって来た訳やけどー」
「なぁアーリィ、誰に説明してんの?」
「ダメよリィ、聞いたら負け。トーンさんや旅人さんもそう思うでしょう?」
「まあ……そうだな」
「……」
森で焚き火を囲みしばしの休息を取りつつ、冒険者達が語り合う。
ソードマンの少女リィにパラディンの少女ミリディアナ、メディックの女性アーリィ。
レンジャーの青年トーンに、アルケミストにしてギルドマスターの旅人である。
回復拠点を発見した彼らはそこを基点として戦闘を繰り返し、レベルも68程になっている。
「でもホント、上では色々あったなぁ……」
アーリィの一言に、3階層の事を思い出す。
アリの群との死闘。ゆっくりと確実に潜行し、地図を埋め策を練っていった。
水辺での戦闘の恐怖。這い寄る敵の気配に警戒心を高めつつ進んだ。
花を渡って進む浮島。地図にひたすら確認を書き込む日々。
亀の魔物との死闘。敵の耐久度にくじけかけた。
そして……モリビトとの遭遇と、守護者との戦闘。
その際旅人がモリビトを見てぽつりと零した「可愛いな……」の台詞は無かった事になっている。
「このエイ、コロトラングル……だったか?厄介そうだなぁ」
「氷の気配がする……炎よ!」
「ならば、今こそこの技を……フリーズガードっ、はぁぁぁぁっ!」
「負けてられへんな……医術防御レベルアップヴァージョンやっ!」
「……サジタリウスの矢よ……打ち抜けっ!」
氷のブレスをミリディアナが防ぎ、旅人の火の術式やトーンの弓術とステップの補助、
アーリィの支援の元ファイアオイルを用いたリィの斬撃を中心に敵を攻める。
そして長い戦いの後……。
「倒れたか……ん?これは良い素材になりそうだな?」
倒れた守護者より回収した素材で、最高ランクの弓が完成する。
多少所持金が不足していた為、資金を貯めて購入する事を目標に据えた。
そして枯れ森にて、カースメーカーの少女ツスクルより鈴を受け取る。
……そうして現れたのは茫洋とした生気の感じられない表情の、一人のカースメーカー。
バードの少女、ニーナが連れてきた紫の髪に緑の瞳をしたその少女は……。
「レムレスちゃん、っていうそうですよぉ♪とっても可愛いですぅ♪」
人形の様な容姿と反応に、ギルドメンバーは少々戸惑うも、すぐに慣れたらしい。
今ではギルド別働隊にいるディアモンドとトモエの言い争いやお付き達の愚痴、
シークとサスのアイテム蘊蓄語りと共に、ニーナに可愛がられている少女の姿は恒例となっていた。
「…………」
まだあまり喋る事も無いが、時折小さいながらも外見相応の可愛らしい声で喋る少女。
いずれ語り合う事もあるだろうと一同は考えながら、新たな仲間を歓迎した。
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