樹海の最後にして最大最強の魔物が、そこにいた。
それに向かい、アルケミストの旅人が真竜の剣を振り上げ号令を下す。
ユミルやアルル、ルーナのモリビト達が敵の行動パターンをある程度読みとり、
パラディン・ミリディアナやエクス、ヘレンが属性防御や守護を行う。
レンジャー・メロディが弓を放ち、或いは防御術の発動速度を高める。
旅人やアルケミスト・シアの術式をソードマン・リィが追撃する。
ブシドー・トモエやリン、ワタル、タケシの刀が唸りを上げ、敵を切り裂く。
ダークハンター・ディアモンドの鞭が唸りをあげ、カースメーカー・レムレスの呪言が響く。
バード・ニーナが皆を高揚させ、メディック・アーリィとトールが治癒や医術防御を行う。
されど敵もその三竜の倍以上もある強大な生命力と多彩な、圧倒的な威力の技を振るう。
攻撃への耐性こそ無いが、縛りも状態異常もほぼ無効化する敵。
攻撃もガードが間に合い、ブーストされた医術防御があるからこそ無事だが……。
「無防備な状態なら、ダメージにして2000は軽く越すね、こりゃ……」
誰かの呟きに皆が首肯し、同時に飛来する攻撃を避け、或いは耐える。
術式を反射する壁・セルメンブレンや大量のHPを回復するセグメントなどで守りを固め、
エクスプロウドやフリージング、サンダーストームといった属性技。
或いはデモンズラッシュ・ウォーハンマー・サイクロンルーツ・ランドスラッシュ等の物理技。
更にはこちらに状態異常を起こす太古の呪粉。そして……。
「ぐ!?しまった……体が……!?」
「……っ!?」
敵全ての全身を縛るエンタングルレイや、即死を与えるネクローシスにて戦線は崩壊した。
――サンダーストーム――
次いで訪れる雷の嵐に為す術もなく吹き飛ばされるギルドの一行。
……だが、その惨状の中一人無事に立っている少女が居た。
カースメーカーの少女・レムレスだ。幸いと言うべきか、雷の嵐が当たっていなかった。
しかし少女に与えられた猶予はターンにして2。
次のターンに仲間を甦らせるにしても何らかの攻撃は来るだろう。
更にその次には属性攻撃の連続だ。
だが……運良くパラディンを甦らせ、そのターンを凌げば……。
「……ミリディアナ……」
少女は迷わずネクタルをパラディン・ミリディアナの口に注ぎ込む。
彼女が意識を取り戻した所に降り注ぐのは再度の拘束術式・エンタングルレイ。
しかしミリディアナは腕だけを守り抜き、ガードを可能な状態を維持していた。
更にレムレスはメディック・アーリィを甦らせる。
……そうして属性技を防ぐパラディン達の影で仲間の復活・及び防御術式の再展開に努め。
再度戦闘準備を万端に整えた一行、そして………………。
「……捕まえた……これで……終わり……」
互いに満身創痍と言った状態の中、ゆっくりと進み出たレムレスがそれに触れる。
仲間達の静止の声が掛かる中、薄く笑って……。
「……消えて……」
少女から真っ黒な霧が走り、一瞬にしてそれを呑み込み消滅させた。
後に残ったのは魔神の礎……それの核のみ。
少女の全身からは恐らくそれを呑み込んだ為か強大な魔力が溢れ出している……が。
数秒の後、嵐のような魔力の放出が唐突に収まり、同時に少女がゆっくりと地に倒れ伏す。
驚愕や恐れで固まっていた皆が慌てて少女に駆け寄り……一斉に安堵の息を漏らす。
少女がいつもの様子で、疲れただけだと小さく笑いを零していたからだ。
エトリアの迷宮は、完全に解明された。
しかし、遺都の外へ向かうのならば?そう、まだ調査の余地は残っている。
恐らくこれからはエトリアの迷宮に訪れる者も居なくなると言う執政院の青年にそう言って。
ギルド・ユグドールズの一行は一時の解散を行う事になった。
しばらくの後、ハイ・ラガード公国に迷宮が存在するという事を知るまで……。
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