彼女の名はロスト。エンディアという家名で登録している占い師の少女である。
家の都合により存在を抹消され、ロストと名乗っている……などと周囲には語っており。
既に冒険者となって4年ほど、随分と慣れそこそこに腕も上がってきたのだが……。
「そろそろ、落ち着ける場所が欲しい……」
根無し草な生活をするには道具が増えすぎてきている。
今扱っている、先端に宝石を嵌め込んだ標準的な雷の杖に、とても出来の良い魔法の盾。
この盾は指輪状で、魔力を込めると光の盾が出現する優れ物でありお気に入りであった。
それに加え元々使っていた炎の杖やブロードソード・モール・長槍など使わない物もゴロゴロ。
これらを抱えて旅をするのもそろそろしんどくなってきたのであるが……。
(うう、流石に家を飛び出してきたなんて言えないわよね……)
そう、実は親と大喧嘩をして家出してきた為に実家に戻れないのである。
彼女の家はセリエ家という多くの分家を持つ家の、その本家であった。
しかしそれ故に厳しく躾られた彼女は家に反発し、飛び出して現在に至るのである。
風の噂で、分家の親戚達がとある町に集まって暮らしており、冒険の拠点を貸してくれていると聞いたが……。
(顔、覚えられちゃってるわよね……ああ、どうしよう……)
頭を抱える彼女。恥を忍んで助力を請いに行くか、現状維持か……。
しばらく悩みの日々が続きそうだった。
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