後1ヶ月で8年目を終える所だったセリエ一族本家の娘・(自称)ロスト。
本名は別にあるらしいが、家出ついでに登録したこの偽名で暮らしている彼女。
ワイバーンも仕留め、討伐者の称号を手に入れ、これからだと思っていたのだが……。
「はぁ……たかがグールの群れを連続で討伐とかさ~……やってられないよぅ」
今はテーブルにもたれる様な姿勢でワインを空けつつ、愚痴っている。
「オマケに今日はリザードマン……弱めの装備をしていったのに全然ダメ。
もう潮時かなぁ……ってさ……ちょっと、おじ様。聞いてるの~?」
呂律が怪しいながらも、傍らで話に付き合う男性に絡む。
(絡み酒って奴か……?)
男性も拘束されて既に数時間、いい加減面倒になってきていた。
「……ああ、も~。もっと楽しくて刺激のある事が欲しいの、分かってる!?だから……」
襟を掴まれゆさゆさと揺すられながらも、何事か呟かれた言葉に生返事で頷く彼。
と、突然その手が止まり……。
「……え?いや、冗談だったんだけど……ホントに……?」
何故かロストの顔が赤い。瞳も潤んでいる。何か不味い事でも……!?
彼が悪寒を感じ振り返れば、家族達の色々な表情。
「でもおじ様なら……うん、私、旦那様になって貰って良いよ……?」
――――世界が凍った。まて、今こいつは何と言った?
「不束者ですが……よろしくお願いしまs……」
テーブルの上で頭を下げた様に見えた途端、コテンと頭が落ちる。
酔いの為に寝入ってしまったのだろう。
「……流石に今の冗談は洒落にならんぞ……」
そう頭を抱えた彼の元に、一通の手紙が届いた。
差出人は本家の当主からであり……内容は一言、「許可」と。
ついでに添えられていたメモに「もう一人行った」とも書かれていたのだが。
固まってしまった彼がそれに気付くのはしばらく経ってからだったとさ。
PR