予想通り散々な物であった。
現れたのは護衛であろう剣士が一人に、弓手が四人。
いずれも冒険者特有の緊張感や鍛えられた様子が無く、酷く頼りない。
その上で根拠のない楽観を持っているのか、出立直前だというのに酒を呷っている始末だった。
(何処かの貴族様が、狐狩りか何かと勘違いしてんのか……?)
内心でそう毒を吐きつつも、護衛の剣士に一縷の望みを託して討伐へ向かう。
とはいえこの剣士も恐らくは護衛兵、荒事の訓練は積んでいるのだろうが……。
「ちっ、よりによってトロルの巣かよ……こりゃ厳しいか……?」
今回の依頼は人型の怪物と言う事で、リザードマンやミイラ程度なら蹴散らせる自信はあった。
だがオーガよりも腕力、耐久力、なにより巨大さで勝っているトロル相手では厳しい。
「今の内に言っておくが……トロル相手じゃ分が悪すぎる。引き上げる事をお薦めしとくぜ?」
護衛の剣士にそう囁くも、相手は首を横に振るばかり。
仕方ないと溜息を零して進んでいき……。
「ちっ、出やがったな……行くぜっ!!」
不用意に弓手の一人が扉を開けた瞬間、合計5匹のトロルの群れが行く手を阻む。
弓手達はおろか剣士までも足が竦んでいる様だが、そんな事を気にしている余裕はない。
「らぁああああっ!!」
満身の力を込めてモールを振り抜き、手近な一体の頭を横殴りに殴りつける。
そのまま体を大きく捻って別の一体の鼻に裏拳を叩き込み、怯んだ所をすかさずモールで殴打。
一匹のトロルが地響きを立てて地面に沈む。
「手前らっ、死にたくなけりゃあとっとと動けっ!!」
男の怒号に飛び上がる様にして弓手達が弓を放つ、が狙いも威力も甘くあまり効果を発揮していない。
護衛の剣士も一体と必死に斬り結んでいたのだが……。
「ばっ……護衛が前に出てどうするっ!」
3体目のトロルを殴殺した所で思わず叫ぶと同時に、後方で断末魔の叫びが響き渡った。
弓手の一人がトロルの手にした棍棒で殴り飛ばされたのだ。
顔面がひしゃげており、直視出来ないような状態。あれでは間違いなく即死だろう。
「ちっ……おらあああっ!!」
護衛の剣士が一体を斬り倒すと同時に、4体目のトロルの腹へとモールを叩き込み内部から破壊する。
と、振り返ってみたのは這々の体で逃げ出す3人の弓手と犠牲者の遺体を背負って後に続く護衛の剣士。
「ったく……本気で厄日だぜ……」
このまま留まっているのは愚の骨頂であるし、依頼も一人ではこなせまい。
自分も依頼の遂行を諦めて、彼らの後に続いていった。
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