「やれやれ……また人型の怪物討伐かよ……もうリザードマンもミイラも見飽きたぜ……。
トロルなんかならまだ楽しめそうなんだがなぁ……この感じだと多分リザードだな」
もう4年程愛用しているモールを手にした男が億劫そうな声でぼやく。
彼の名はハーグ、かつてとある田舎の小国で下級兵士を務めていた男である。
「お、丁度おいでなすったが……やれやれ、やっぱりかよ……」
彼らの行く手を遮ったのは、通路で待ち構えていた精鋭のリザードマン兵士。
しかし一行は躊躇いもなく、攻撃を仕掛けていく。
「あぁ、面倒だなぁ……らぁっ!」
気怠そうな口調であっても攻撃の瞬間には鋭い狩猟者の目となる男。
モールの一撃でリザードマンを叩き潰すと、即座に横に振り抜いてもう一体を狙う。
男は手練れの早業であっけなく二体のリザードマンを仕留めた。
かつては両手で振り回していたモールも、今や片手で自在に操れるまでになっていた。
身に付けている装備は目深に被れる標準的な品質の帽子に、丈夫さを重視した麻の衣服。
申し訳程度に革製の胸当てを身に付けているが、非常に軽装である。
武器のモールにしても品質は出来が良い、という程度。上質とまでは行かない代物だ。
詰まる所、男の真の武器はその五体に宿る剛力と耐久力にあったのである。
その後も数回リザードマンの群れに襲われたが、彼らはあっさりとそれを駆逐していった。
そして敵の長を仕留めて町に戻った際、リザードマン20体殺し、と称号を得たのであった。
……まあ、すっかりやる気の無かった彼にとっては嬉しい物でもなく、情熱が僅かに下がったのだが。
男がそうしている頃、シェリーと呼ばれる少女はキノコ探索の依頼を受けていた。
何の事はない、前回失敗した依頼の再チャレンジという訳である。
行く手を遮る敵を弓で牽制し、周囲に生えた食用キノコを確保しつつ彼女は進む。
……途中、余りに採りすぎて仲間に呆れられたのは秘密だ。
そうこうしている内に、件のキノコを発見した少女。
早速酒場へと依頼達成の報告に戻った所で、依頼から戻った男とバッタリ出くわした。
「無事で良かった、お帰り」
「おう、お前こそ依頼達成出来たみたいだな?待っててやるから報告してこい」
「ん」
そんな短いやりとりの後、依頼達成の報酬を受け取るシェリー。
更に小さな包みを故郷に送ってくれる様に頼み、酒場を後にした。
包みの中には洞窟で見つけたキノコが数種類。
故郷の地方で薬として珍重される種類のものを見つけたので送っておいたのだ。
恐らくあの量ならこれまでの仕送りの数倍にはなるだろう……。
「お待たせ」
「おう、来たな。んじゃまあ、帰るか」
「ん」
二人並んで家路に付く。それが何だか楽しいと少女は思った。
「そういえば」
「ん?何だ?」
「誕生日、おめでとう」
「ああ、そうだったな……自分の誕生日なんざ、この年になると思い出さないんだがなぁ」
「プレゼントは……キノコ料理で良い?」
「ああ、十分だ。ついでに報酬が良かったからな、あの店でいつもの酒買ってきてくれ」
「わかった」
そんないつもの事の様なやりとりを繰り返しながら、二人は一時の休息を過ごしていた。
PR