「っらあ!」
ハーグと呼ばれる男の振るう槌が虎の頭部を一撃の下に打ち砕く。
今回の依頼はリザードマン討伐、その道中で虎の群れに襲われたのだ。
僅かに虎の爪が掠め軽傷を負うも、自分より冒険者として年季の長い仲間もいる。
さして苦戦することなく虎の群れを仕留めた彼ら。
その後も立ち塞がる巨大なスライムを仕留め、リザードマンの精鋭兵を殴り倒し。
「何だか随分見慣れた気がするが……親玉か、行くぜええっ!」
咆吼の如き叫びと共に突撃し、敵の親玉の剣が自身を軽く切り裂くのも構わずに。
槌を横に振るって殴りつけ、返す刀で斜め上に振り抜き敵を吹き飛ばす。
そこにすかさず仲間の一人がトドメを刺し、今回の依頼も無事に達成出来た。
「やれやれ……まあ、なかなか歯応えはあったかな……」
報酬を受け取り、住居へ戻った彼。そこに待っていたのは……。
「……お帰り」
どこか落ち込んでいる様子の少女が一人。彼女の名はシェリー、弓使いの少女である。
今回も、前回達成出来なかった珍しいキノコを探索するという依頼を受けていたのだが……。
「またダメだったのか?」
叔父の言葉にビクリと震える。そう、前回はキノコが見つからず泣く泣くの帰還であり、今回は……。
「探索した洞窟が、蛇穴で……2回襲われた。蛇は仕留めたけど、味方が二人喰われた」
入り口に開けられた穴から落下した所で大蛇に襲われたのに始まり。
狼の群れと遭遇してこれを仕留め。一息つく間もなく二体目の大蛇に襲われたのだ。
その際に一人がまず喰われ、唖然として動きを止めたもう一人が更に喰われた。
その大蛇に矢を撃ち込んでトドメは刺してきたのだが……。
「もう、キノコ探索どころじゃないって。皆逃げたから、戻ってきた……」
項垂れて呟く少女の声は申し訳無さそうな響きを持っていた。
無理もない、同居の条件で報酬の2割を家賃やその他の費用で渡すと言っているのだ。
なのにこれまで得た報酬はと言えば、最初の冒険以外ではゼロなのだから……。
「……つまりは、今回も収入なしってこったな?やれやれ……」
叔父の言葉に肩をビクリと振るわせ、慌てた様に両手を振る少女。
「い、いやでも、ほら、蛇、蛇肉捕ってきた。これだけあれば一ヶ月は持つ……よ?」
必死な様子で大蛇から捕った肉を差し出す姪の様子に、男は思わず噴き出し……。
「はは、まあ今回はそれで勘弁してやる。次も茸探しだろう?どうせならしっかり成功させな」
そんな言葉をかけてやると、姪っ子は嬉しそうに頷いた。
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