この世界では冒険者が技や魔法を使うためには魔力以外に触媒が要る。
それはすなわち技を使うにふさわしい武具や魔法を封じ込めた杖、防具である。
そしてエリーゼは市場を練り歩き長い探索の旅を乗り越えて、
炎と氷の力を持つ最強の杖「コロナ」「アブソリュートゼロ」を作り上げる事に成功した。
しかしこの世界は神の意志によりあっさりと武具の力が変動してしまう。
制作したその日にコロナの力が弱められるなどハプニングはあったがおおむね満足だった。
そしてその日も市場をのぞいていた彼女の目に映った物は……。
「……あれ?これって何だろ……錆びてるけどすごい魔力を感じる……」
そう、それは一本の錆付いた長杖。だがその内から感じる魔力は凄まじい。
是非とも手に取ってみたかったが……現在は交換材料がない。
「錆付いた槌と交換……どこかにあったかなぁ」
未練を残しつつその場を跡にして数分後、偶然だが件の槌を発見した。
値段は金貨6万枚、所持金は23000枚ほどと倍額以上だったが……。
「ここで買わないと後悔しそう……よーし、これ下さいっ」
思い立ったが吉日と、2本の魔杖の内コロナを売り資金を作ると槌を購入。
すぐさま早馬を飛ばして長杖との交換を実行させた……そして。
「……わぁ~……すご~い……!」
長杖の錆が物理的な物でなく魔力的な物と判明した為研ぐ事を放棄。
代わりに魔力を注ぐため大量の魔石と魔法の結晶……魔晶とともに安置する事10時間。
そこには凄まじい魔力を放つ魔杖「ジャッジメント」が完成していた。
現在自分が入手できるであろう中では最高の杖を入手し、満足に微笑むエリーゼであった。