人形の聞いている音とは別の球体に込められた音に耳を傾けつつ、目を閉じている。
「……~♪~♪」
何かの楽曲が封じられているらしく、少女は小さく歌っていた。
そんな少女の様子を意に介する事のない人形は、少女に背を向けて音に耳を澄ます。
聞こえるのは喧噪や自然の音に混じった、本来は有り得るはずのない声。
猜疑や疑問、裏切り、嘲笑、或いは心配や愛情、決意、もしくはその両者が綯い交ぜになった音。
中でも人形が気に入ったのは、小さな墓地に埋められた一つの棺から聞こえる、同族の声。
死した幼子の寂しさ、孤独を慰める為に共に埋められる小さな人形の声。
――――これで、ずっと、いっしょ――――
そんな小さな声に、人形は笑みを深めていた。
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