コレまで幾度も対峙してきたモリビトの少女が、こちらに問い掛ける。
その言葉に反論しようとしたリィ、しかしアルケミストの青年が無言で首を振る。
最早言葉を交わして収まる状況ではないと、誰もが理解していた。
(自分達の死を望む……考えられるとするならば……)
そして、モリビトの少女の語る人間達の事に皆が考え込む中、青年は淡々と推測する。
しかし今は考えても詮無き事、と皆に戦闘開始を告げる。
森の奥へと消えていった、モリビトの少女の背から視線を外さぬまま。
――――そして、モリビト達との決戦が始まった。
豪腕を持って容赦なく襲い来るフォレストオウガ。
炎の息を始め様々な技を駆使するフォレストデモン。
その歌声にて襲い来る姫君や貴婦人。
そして、黄金色に輝く巨長・イワォロペネレプ。
特にイワォロペネレプを一度討ち果たした物の、すぐに復活したのには目を瞠った。
(――――モリビトの守護者ならば……モリビトが居る限り、不死身か……!)
皆にその情報を告げ、モリビト達を一人また一人と打ち倒していく。
そして……。
「凍れ……!」アルケミストの氷結の術式が。
「……痛いの……あげる……」カースメーカーの禁呪・ペイントレードが。
「サジタリウス……っ」レンジャーの秘技・サジタリウスの矢が。
「ぁあああああっ!」ソードマンの奥義・チェイスフリーズが。
ギルドの皆が攻撃を仕掛け、黄金の巨鳥へ果敢に向かっていく。
そうして遂にイワォロペネレプを仕留め……戦闘はユグドールズの勝利に終わる。
誰もが疲れ切り、座り込むように休息を取っているその最中。
現れたのは呆然と、しかし悲しげな表情を浮かべたモリビトの少女。
彼女は戦える仲間全てを失い、戦士は死に絶え抵抗する事は出来ぬと語った。
そうして先へ進めと言い残し、立ち去ろうとする。
「……待ってくれ」
その背に声を掛けたのはアルケミストの青年。
「モリビト達は、死んでなどいない……半月程で、甦る」
青年の声にモリビトの少女も含めた誰もが顔を上げ、青年を凝視する。
「モリビトだけではない……この樹海では、命は失われない……人を除いて。
考えてみるが良い、スノードリフトも、ケルヌンノスも……コロトラングルさえ甦った」
彼の言葉に皆が押し黙り、モリビトの少女もまた目を瞠る。
「彼らも、倒れはしたが息はしているはずだ……俺の仲間は、それが、できる」
青年の言葉に皆、気恥ずかしくなったのか顔を染めたり、背ける者が多い。
そんな光景にモリビトの少女は呆気にとられた表情を浮かべた後、小さく呟いた。
「……ならば、ますます私が此処にいる意味はない」
そうして立ち去ろうとする彼女の手を引き、青年が囁く。
「意味なら、有る……俺と共に、来てくれないか」
青年はじっと彼女を見据えて言葉を紡ぐ。
「モリビトが只殺される事は許せない。古の協定とやらもあるのなら、それを伝えて欲しい。
そしてもし許されるのならばその先も……君と共に、旅をしたい。俺は、君と共に在りたい。
この場所の他にも樹海は存在する……君と、それを見届けたいんだ」
……彼の言葉に誰もが絶句していた。
プロポーズめいた言葉にも、その他にも樹海が存在するという事にも。
そうして恐らく一番驚いていたらしいモリビトの少女は、そっと彼から体を離す。
「少しだけ、考えさせてくれ……」
そう言い残して森の奥へ消えていったモリビトの少女。
それを見届けると、森の奥へ進み地下への階段を見つける。
だが先へ進む前に一度、エトリアへ報告の為に戻る事にした。
そうして聞かされたのは執政院の長の失踪。
(やはり……と、なれば恐らく……)
アルケミストの青年は一日の休息を皆に伝えると、一人樹軸より枯レ森へ向かう。
……そして翌日。
5階層へ挑まんと階段へ向かうユグドールズ一行の中。
アルケミストの青年に寄り添うモリビトの少女の姿があった。
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