「此処は……隠し通路か……?」
地下16Fの東の壁に隠し通路を見つけた第1パーティ。
内部へ入った途端、これまでの敵と一線を画した力を持つ敵が立ち塞がる。
「こいつら、まさか!?」
「ああ、間違いない……五層の敵だろうな……だが!」
「敵は、討つだけ……」
動揺も束の間だけ、リィとミリディアナが敵に斬りかかりメロディの矢が放たれる。
「……凍れ」
「ていやっ!」
アルケミストの青年と、メディック・アーリィもそれぞれに援護を行い敵を仕留めていく。
そして地下への階段を見つけ、下っていくと……。
「敵も増えたけど、こりゃ……少々あかんかも……」
目の前に現れたのは骨の如き甲殻で身を包んだ古竜。
「死を呼ぶ骨竜」と呼ばれるそれが計3体。
更には大熊「魂の裁断者」や大鰐「深海の王者」も立ち塞がる。
道を阻むそれらを休息しつつ全て仕留めた頃には満身創痍という言葉すら生温い状態だった。
そんな彼らの前に、巨大な獣が姿を現す。
マンティコアと呼ばれるソレは堂々とこちらを睨め付けている……今戦えば間違いなく負ける。
そう判断した一行は一旦エトリアへと帰還し……死闘の末、マンティコア討伐を果たした。
その頃、枯レ森の奥へ進んだ2つのパーティもまた苦戦を強いられていた。
モリビトの中でも恐らく戦闘に特化した存在だろう、女性型のモリビトに強襲されたのだ。
その歌声が厄介だと判断した一行は、行動を封じに掛かる。
「まずは頭を縛らせて貰うわ……よし、次は腕!レムちゃん縛って!」
ダークハンター・ディアモンドの声にカースメーカーの少女レムレスが小さく頷く。
と同時に外套が蠢き始め……内部から飛び出した連結された白い人形の腕が敵を縛りつける。
敵が火に弱いと見たトモエが上段の構えを取り、愛刀・八葉七福に炎を纏わせ始めた。
「脚も……縛ってあげる……」
レムレスの呪言により脚を縛られ、前進を封じられたモリビトをトモエの奥義・卸し焔が襲う。
更にディアモンドの奥義・エクスタシーが叩き込まれ敵は沈黙した。
死んでは居ないが、傷が回復するまで数週間は掛かるだろうという見込みだった。
また19階に降りるまでにももう一体、別のモリビトの女性に襲われるも同じ様に撃退。
更に第3パーティも襲撃を受けていたが何とか押し返せたらしい。
19階にて幾つも空間の歪んだ森を抜け、20階へ到達した一行。
しかし此処で三日が過ぎた為、帰還する事にしたのだった。
エトリアの酒場で、それぞれの状況を話し合う一行。
まずは第2、第3パーティが報告を始めた。
代表としてエクスとリンが話し始める。
「こっちは20階に到達できたよ、とは言え階段を降りたばかりだけれど」
「完全に戦闘向けというモリビトはまだ居らず、20階にはそう多くの気配もなかったでござる」
両者の報告を受け一同で協議が始まった。
「なら……逃げちまってどっかに隠れてるとか?」
「いや、この場合は待ち伏せという方が正しそうだが……」
「でも今更そんな姑息な真似をしてくるかね?」
「せやったら……退いてくれる訳はないしなぁ……」
皆の意見が飛び交う中、ぽつりと小さな声が響いた。
「……多分、決闘」
カースメーカーの少女の声に皆が一瞬沈黙し、大きく頷いた。
「恐らく、戦闘型の精鋭を集めての短期決戦だろう。正面からぶつかって来るだろうな」
「それに……前に戦った守護者のような物が居ないとも言い切れない」
どちらにせよ、敵を倒しきるまでは向かってくるだろうと結論付けた一同。
次いで、第1パーティからは隠し通路の先にあった物の報告が行われた。
恐らく5層に生息するであろう魔物が存在した事。強力な魔物が待ち受けていた事。
……そして、マンティコアを発見し討伐した事。
「まああそこで準備を整えたおかげで随分強くなった気はするけどな」
リィの言葉通り、強力な装備品を獲得出来た為に戦力は大きく上昇していた。
特に恐らく最強の術式媒体となる賢者の杖の原料となる魔獣の瞳を得たのが大きい。
他にも剣状の肋骨からドヴェルグの魔剣を、骨竜の胸格からディノブレストを。
モリビト達の落とした糸でクイーンズナインを、またルーンシリーズの防具も揃った。
「……よし。明日、決戦に向かう」
旅人の言葉に皆頷き、その日は各々英気を養う事にしたのであった。
(可憐な君、どうか傷付く事の無いように……)
小さな、本当に小さな呟きは、誰にも聞かれる事はなく。
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