「よっしゃ~!この剣凄く良い感じだぜ!」
「そうね……今までの剣に比べると凄く強いわ」
「杖やら弓も強化できたしなぁ……鹿さまさまやわ」
「……防具も、この階層ではこれが最上級か……?」
「そうだな。恐らくそうだろう」
迷宮4Fを踏破し、更に下の階へ向かった一行。
狂える角鹿や怒れる野牛より手に入れた素材で新たな武具が開発された為、
一行の戦力は大幅に増していた。
また、3Fにて出会った呪術師・ツスクル嬢の助力もあり修練も積みやすい。
レベルにして19程度、5Fの探索も大詰めを迎えたのだった。
そして今回最後の扉を開け、ミッションの対象・スノードリフトを発見したのであるが……。
「……リィの馬鹿。リィのドジ。リィのぺったんこ。リィの単細胞」
「な、そういうミリィだって遅れてたじゃね~か……って、何か関係ないの混ざってたぞ!」
「ちょ、喧嘩しとる場合ちゃうやろ二人とも!」
パラディンの少女ミリディアナの恨みがましい声に反応する声と、それを止める声。
「不味いな……来るぞ」
「魔力は……ギリギリ、か」
レンジャー・トーンの緊張した声と共にこちらへ突撃してくる白い巨体。
スノードリフトと、正面からぶつかり合う一行。
……実際は護衛のスノーウルフをまず駆逐し、一度ツスクル嬢の元へ引き返す。
そんな予定を組んでいたのだが……ある程度近付いても反応を示さない相手に、
ソードマンの少女・リィが焦れて近寄った為に捕捉されてしまっていたのである。
「狼の気配は?」
「……3,いや……4つ。不味いな……」
1体でも手強いのになかなか厄介な僕が4体。
ついでにいうならばもうしばらく修行し、火炎の術式を修得してから挑みたかったのだが……。
「まあ、腹を括るしかないだろう」
「……違いない」
苦笑と共にアルケミストの旅人とトーンは、それぞれ術式を解放し、弓を構える。
「防御陣を組めっ!守りを固めるぞ!!」
「ウチも手伝うで……てい、医術防御やっ!」
ミリディアナとメディックの少女・アーリィの守りの技が皆を包む。
それでもなお、相手の攻撃は激しい物であった。
「畜生、数が多い……こうなりゃまだ練習中だけど……喰らえっ!でりゃあああっ!!」
と、敵の群れの中にリィが突撃し、竜巻の様な勢いで剣を振り回した。
トルネード、と呼ばれるその剣技は敵の群れにかなりの効果を及ぼしていく。
「ちっ……氷に強くなければ、全体を狙えたが……無い物ねだりだな。炎よ!」
旅人の放つ火の術式と、リィのトルネード。その二つを攻撃の軸として敵を減らしていく。
だがスノードリフト一体となった所で旅人の精神力が尽き、リィも疲労の限界に達した。
否、それは味方全員に言える事。
「状況は?」
「ウチがエリアヒールを一回で打ち止め……他の皆は言わずもがな、や」
荒い息でアーリィが答える。このままでは敵に押し切られて仕舞いかねない。
後一歩、後一度でも火の術式が使えれば……!
「リィ!」
旅人が叫ぶと共に、リィに小瓶を投げる。その内容液が剣に触れた瞬間、激しく燃えだした。
ファイアオイル……何度か前の探索で拾ったのを失念していたのである。
「これ……よっしゃあ、喰らえっ!!」
全力での大剣による連続斬撃。それのみを磨いてきたというダブルアタックの技。
炎を纏った斬撃がスノードリフトを捉え……遂に敵を討ち果たした。
こうして一行は第一階層を攻略し、第二階層に到達したのであった。
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