それは二人が依頼を終えて戻ってきた、とある日の夕暮れ時。
「ほぉ、今回はしっかり見つけたのか。珍しいキノコ」
「……(こくこく」
「んで、報酬もしっかり……ほう、金貨1700枚ね」
「……(えっへん」
「まあ俺の今回の収入は11000枚な訳だが」
「……!?(びっくり」
「……つうか、一旦食うの止めろ」
「むっ……(ごくん)、何でそんなに差がある?」
収入の違いに身を乗り出して問い掛けるシェリー。
彼女の目の前には大量のキノコ料理が盛られた皿が並んでいる。
「そりゃまあ、依頼が難しいからじゃねえか?……ちっとも歯応え無かったけどよ」
それに対し気怠げに答えるハーグ。今回の依頼は人型の怪物退治であった。
待ち受けていたオーガ達を、モールの一撃の下に沈めてきた彼は、軽い手傷程度で済んでいた。
「まあ祈念すべき魔物100匹抹殺も出来たけどよ……目の前であんな良い物を持ってかれちゃなぁ」
そう、今回の依頼の最後で見つかった上質のハンマーは、残念ながら他人の手に渡ったのだ。
それもあって、情熱はかなりダウンしてしまっている。
「……むぅ、まだ借り分多い……何時、追いつける?」
「さあな、まあ数年はかかるんじゃねえか?」
シェリーはそう尋ねるが、彼は笑って言葉を返す。
「それよりお前、次の依頼は怪しいからな……気を付けろよ?」
「ん」
そんな会話を最後に、この日の冒険についての語り合いは終了。
シェリーが採ってきたキノコの消費に意識は裂かれていった。
「……実はネズミも捕ってきた……食べる?」
「いらん」
「む、美味しいのに……(ぱく」
こんな心温まる様な、寒気がする様な会話もこの家では日常茶飯事であるとか。
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