「おい、迂闊に進むなこの莫迦、そこに罠が……っ!!」
ハーグが叫んだ刹那、部屋中に響く轟音。閃光。全身をびりびりと突き抜ける衝撃と凄まじい熱。
酒場で始めに集まったのは4人、冒険の鉄則は6人での依頼遂行。
残り2名をどうするかと考え、そこに居合わせた二人の冒険者を加える事にした。
彼らは冒険者として名乗る名も持っておらず、何処か不慣れな印象だったが……。
「ったく、お前等……勝手に進むんじゃねえ……っておい!」
苛立ちを込めて忠告した矢先、彼らがスイッチを不用意に押し、落石が降り注ぐ。
巨大な石が全身をしたたかに打ち付け、重傷を負う彼ら。
「オイオイ、しかも今の音で敵さんかよ……」
更に追い打ちを掛ける様に現れたのは、最早見慣れた感の強いリザードマンの群れ。
傷を負った状態で交戦を開始し、手練れの早業でリザードマンの精鋭を一体叩き潰す。
と、敵のリーダーの攻撃が傷口を抉り、深い傷を負う……が、彼はニヤリと笑みを浮かべ……。
「まだまだ、だぜぇ……!」
全力を持ってリザードマンロードの頭を殴り飛ばし、数歩後退させる。
すかさず仲間がトドメを刺し、生き残ったリザードの群れも逃げていった。
「はぁ、今回は何か疲れたな……どっちかっつーと精神的に」
小さく嘆息しながらも、彼は家路に就いたのであった。
一方その頃、洞窟に鉱脈があると聞かされてやって来た狩人シェリーを含む一行は。
大蝙蝠との連戦であり、若い女性が多いパーティで攻撃を躊躇している者も居たが……。
「こいつらも料理次第で旨い……大人しくしてろっ」
獲物を見る狩猟者の目(比喩に非ず)で大蝙蝠を撃ち抜く彼女。
戦闘終了後には当然足を縛って持ち帰る。仲間の怯えた視線など気にしない。
大蝙蝠を二匹捕らえてご満悦な彼女が、ふと足下に違和感を感じた。
何の変哲もない通路だったのだが、確かめる様に幾度か足踏みし……。
「……おい、此処だ。鉄の感じがする……匂いもだ」
彼女の言葉を裏付ける様に、地面に鉄が僅かに浮き出していた。
初めての冒険以来、初の依頼成功と相成ったのだった。
そして報酬を受け取り家へと戻った彼女はといえば。
「どうだ……大蝙蝠の肉に、金貨2000枚。凄いだろう(えっへん」
「蝙蝠は喰えるのか?……ああ、ちなみに俺は今回の報酬5800枚な」
「!?」
とまあ、こんな会話を繰り広げているのであった。
後日、療養中のとある槍使いの少女の耳に入り一悶着あったとか無かったとか。
これはまた別のお話。
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