「もう……折角良い稼ぎ場だって聞いたのに、デタラメじゃないっ」
地面に突いた長杖へ体を凭れ掛け、一人の少女が呟く。
少女の名はエリーゼ、まだ幼さが抜けきらない年齢の魔術師であった。
今日は新たに財宝が見つかったという洞窟へ踏み入ったのだが……財宝は殆ど無し。
それどころか緑竜の上位種である黒竜、ブラックドラゴンと対峙する羽目になっていた。
かつて下位種の緑竜に深手を負わされた記憶が蘇り、体が震え出す。
それでも恐怖を押さえて敵と対峙し……そして。
「はぁ、はぁ……うぅ、何とか勝てたけど……此処魔物ばっかりだよぅ」
多少傷を負いつつも黒竜を撃退、その後も立ち塞がる魔族や魔物、妖精を蹴散らし。
罠を乗り越えつつ洞窟を進み、無事に生還を果たす事が出来た。
「はぁ~……生きてて良かったよぅ……しばらく冒険は休もう……」
家に帰り着いた後、安堵のまま3日程休む事に決めたのであった。
「アルちゃん達、どうしてるかなー……お掃除とかちゃんとしてると良いんだけど……」
寝台に転がりつつ、眠りに落ちる僅かな時間に大切な友人達を思う。
それでも最初に出てくるのが生活面での心配というのは何だかなぁ、と彼女は苦笑して。
緩やかに眠りの中へと落ちていくのだった。
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