突く、突く、突く。一心不乱に石像に刃を突き立てる。うっすらと口元に笑みを浮かべて。
何も知らぬ者が見れば、気が触れたか何かの代償行為かと思うだろう。
それ程までに突き込まれる短剣の狙いは正確にして的確、急所となり得る場所のみを穿っている。
されど、この行為に殺意などは存在していない。
「神をも穿つこのボクが……たかが呪竜如きに……っ」
そう、これは一種の自己暗示。腐肉を零し腐臭を漂わす、呪われし竜の骸。
少女にとっては其れと対峙するための通過儀礼のような物。
やがて石像の額に鋭い一撃を叩き込むと、少女は塔を後にした。
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