聞き慣れぬ言葉で天へと誘う安らかで暖かな歌。精神の奥底まで入り込んでくる美しき旋律。
そう、今にも背の翼を広げてあの空へとはばたきたくなる様な……。
「……ふふ、これは凄いねぇ……気付くのが遅かったら危なかったかも……」
少女は額に滲んだ汗を拭い、僅かに震える声でそう呟いた。
そう、この歌は危険だ。安らぎの奥に待ち受けるのは飛翔の願望と墜落の現実。
気付いた瞬間に精神力を振り絞って己を律したが、気付かなければ自分も飛んだに違いない。
そしてこの歌を聴いてしまった者の様に、天に舞うつもりで地に墜ちていっただろう。
「……でも、この歌は何処の歌だろ?普通の人が聞いちゃったら大事件になりそうだし……」
案外天国とかもあるのかな?と少女は小さく呟いた。
……工房の窓の外では、雪が光を受けて天使の羽の如くに舞っていた……。
PR