手紙には、今朝ずっと同じ家で暮らしていた友人が遠くに旅だった事。
別れの記念の品を預かった事……家に一人となって、何処か寂しいという事が記されていた。
微かに色や手触りの変わった手紙の端の部分。きっとあの子は泣いていたんだろう。
「優しいし強いけれど……まだ子供で、寂しがりやさんだもんねぇ。でも大丈夫だよ……」
少女はそっと囁く様に声を漏らすと、両の手に風を集める。
遠く、遠く、あの子の元へと届く様に。そう呟いて、少女は優しい風を天に解き放った。
……今はまだ遠くにいる、愛しい義妹へと届くように、と。
――――さて、シリアス風味や家族愛のようなお話は此処まで。
会議室にて魔女に貰ったクッキーを頬張り、魔女姿に変身した少女であるが……。
「あははははははははははははははははははは」
その姿のまま、やって来ましたタワー30階。自在に動く尻尾を眺めてふと連想したのがそう、ドラゴン。
テンションの高さも相まって、笑い声は途切れることなく仄暗い竜の巣の中を支配する。
「あはははははははははは…………さあ、出ておいでなさい…………!」
少女の笑い声。爆音。破砕音。足音。竜の咆吼。竜の断末魔。
魔女のローブを纏う少女は手にしたステッキを振り回す。その先端に集まる薄紫色の燐光。
それは一筋の閃光となり、触れる物を容赦なく貫き撃ち滅ぼしていく。
いかに強靱な肉体を持つ竜族といえど、今の少女の前に立つのは死を意味するも同じ。
少女が去った後、その場には大規模な破壊の跡が残されていたという。
PR