港に戻った少女達を待っていたのは、あのおじさん。
「おぅ、お帰り!ついさっき情報が一個入ったぞ!」
おじさんが言うには、二匹の大きなヒヨコ虫が何かを捜す様に、
コロシアムの傍をうろうろしていたという話でした。
「どうもありがとうございますっ。それじゃ行ってみよう!」
「見つかると良いッピ♪」
「ピヨー♪」
三人は意気揚々とコロシアムの方へ向かいました。
コロシアムには今日も、沢山の人が詰めかけて大賑わい。
とても、すぐ探せそうにはありません。
「うーん、どうしよう?」
「聞き込みも難しそうだッピ……」
「ピー……」
三人が相談していると、一人の選手が通りかかりました。
その選手はヒヨコ虫をじっと眺めた後、声をかけてきます。
「ねえ、その子はひょっとして迷子だったりしない?」
驚いて船首の方を見ると、その選手は小さく笑っています。
「やっぱり、さっきその子によく似たヒヨコ虫を二匹見たんだよ」
大きな手がかりを前に喜ぶ三人。
「それで、何処で見たんですか?」
「教えて欲しいッピ!」
「ピヨピヨーー!」
早速教えて貰おうと尋ねて見ますが、その選手はと言えば。
「うーん、でもタダじゃ……そうだ、試合に勝ったら教えてあげる」
と、悪戯っぽい笑顔で言いました。思わず固まる三人。
「ほらほら、今は丁度空いてるし登録しておいで」
そうしている内に、選手に連れられ登録する事になりました。
「本当に勝ったら教えてくれるんですね?」
「うん、嘘は付かないよ」
コロシアムの中央で、真剣な表情で向かい合う少女と選手。
一方ぴよ子とヒヨコ虫の方はと言えば……。
「待つッピ!勝手に入っちゃダメだッピー!」
「ピヨピヨ、ピヨーーーーーー!」
一緒に戦いたがるヒヨコ虫を、ぴよ子が応援席で押さえています。
その可愛い戦闘?にコロシアムのお客さんも注目していたり。
そうこうしている内に、試合開始の合図がなって――――。
「いやあ、負けた負けたーー!」
「約束ですよ、教えて下さいっ♪」
勝負は少女の方が勝利を収めておりました。
「つ、疲れたッピ……」
「ピヨーー……」
可愛い戦闘にも同時に決着が付いたらしく、歓声が上がります。
控え室に戻った三人と選手は、詳しく話を聞き始めました。
「私が二匹のヒヨコ虫を見たのは、此処に来る少し前でね。
スペクトラルタワーから出た時にすれ違ったから、多分そこだよ」
という証言を貰い、選手にお礼を言って三人は塔へ向かう事に。
――――そこで親は見つかるのでしょうか……?
病院で軽く傷を回復し、やって来ましたスペクトラルタワー。
あまりに広い内部に、何処から探索しようかと悩みますが……。
「うーん……ぴよ子、何処から捜そう?」
「広すぎて大変だッピ……」
「ピヨーー……」
なかなか探す場所が決まりません。と、その時。
「おや?そのヒヨコ虫……さっき見たのに似てるなぁ」
塔から出てきた一人の冒険者の声が聞こえてきました。
「え、何か知ってるんですか!」
「教えて欲しいッピ!」
「ピヨーー!」
その声に反応して思わず大きな声を出してしまう三人。
それに驚きながらも、冒険者は答えてくれます。
「ああ、さっき竜の巣から下りてきた時に見かけたからさ。
襲ってこなかったからこっちも手出ししなかったけど」
疲れてるみたいに見えたなーと言って、冒険者は去っていきました。
「それじゃあ、まず竜の巣を捜してみよう!」
「賛成ッピ!」
「ピヨーー♪」
ひとまずの目的地も決まり、やる気一杯の少女一行。
塔の中に送って貰うと、てくてくと竜の巣に入っていき……。
「……良かった、竜は何処かに行ってるみたい」
「気配も感じないッピ」
「ピヨーー♪」
ほっとしながら竜の巣を捜しますが、親ヒヨコ虫の姿はありません。
もう少し捜そうと思い、物陰から動こうとして……。
ズシン、ズシンという足音が聞こえてきます。
動かない様に気を付けて隠れていると、目の前を通り過ぎる白い竜。
(見つかっちゃったら危ないかも……)
(声を出さない様にするッピ……)
「ピヨーー♪」
((!?))
嬉しそうな声を上げて飛び出すヒヨコ虫に固まる二人。
白い竜はヒヨコ虫の方へ視線を動かし……。
「……」
くい、と部屋の出口の方を顎で指し、ゴロンと地面に転がりました。
しばらくして、大きな竜の寝息が聞こえてきます。
「怖かったー……でも、あっちに何かあるみたいだったね」
「捜してみるッピ」
「ピヨーー♪」
出口の傍を捜してみると、見つかったのは今にも開きそうな宝箱。
「ピヨピヨーーーー♪」
その宝箱に体を押しつけて、嬉しそうな鳴き声を上げるヒヨコ虫。
開けて欲しいと訴えている様に見える瞳で見上げてきます。
「開ければいいの?……わぁー♪」
「ベッドみたいッピー♪」
その中には一枚の護符と一緒に、藁や布きれがベッドの様に詰まっています。
そこへ飛び込んで、ころんと転がるヒヨコ虫。
「此処で暮らしてたの?」
「そうなんだッピ?」
「ピヨーー♪」
二人の質問に嬉しそうに鳴いて答えるヒヨコ虫。
けれども、まだ親ヒヨコ虫の姿は見えません。
「お家は見つかったけど、どうしよう……」
「ここで待ってると、竜が出てくるかもだッピ」
「……ピヨー!」
しばらく相談していると、突然ヒヨコ虫が鳴き始めました。
視線を向けると、口に護符をくわえて歩いていきます。
「あ、待ってー!」
「離れちゃダメだッピ!」
二人は慌ててヒヨコ虫を追いかけて行き、追い付いたのは交換所。
「ピヨ……ピヨーーーー!」
「景品交換所へようこそ!……ってあら?」
交換所のお姉さんが歓迎してくれましたが、何かに気付いたようです。
その後ろには、二匹の大きなヒヨコ虫の姿。
「そう言えばあのお姉さんって……」
「ヒヨコ虫を連れてたッピ……」
「ひょっとして……あの、この子は何処で見つけました?」
小声で話していると、お姉さんが顔を上げて話しかけてきます。
「実は……」
「……という訳だッピ」
「まあ、そうだったんですか。ありがとうございます」
「ピヨピヨーー♪」
「ピヨっ!?」
「ピヨーーーー!!」
事情を説明している内に、ヒヨコ虫の親子も感動の再開中。
髭の様な物が生えたヒヨコ虫とリボンを結んだヒヨコ虫が、
一緒に居たヒヨコ虫に何かを言っている様に見えました。
その後、親ヒヨコ虫や交換所のお姉さんから何度もお礼を言われて、
今回の迷子騒動は無事に終わりましたとさ。
「ピヨピヨーー♪」
「この子、また一緒に遊びたいって言ってます♪」
交換所に来れば何時でも遊べますからね、というお姉さんの言葉と、
ヒヨコ虫親子の鳴き声を背に受けて、二人は家路に就きました。
――――明日はどんな一日になるのでしょうか……?
追伸:その日以来、アイテム交換所で遊ぶ少女達が見られる様になったとか。
※モデルはMika様です、ご協力頂きどうもありがとうございました♪