ギルド「ユグドールズ」一行が歩を進めた先は……これまでと全く感じの違う建物内。
一行がそれぞれ壁を触ったり窓の外の景色に心を奪われている中、ぽつりと漏れた声。
それをモリビトの少女……名前が無かった為に「ユミル」と名付けられた彼女が拾った。
彼女が寄り添う、ギルドマスターであるアルケミストの青年が小さく零した言葉。
……「新宿?」という声を。
モリビトであるユミル自身にも分かっていない迷宮の第5層に付いて知っているのか?
そう思い見上げた先に見えたのは、何かを決意したかのような青年の顔。
そして最初に踏み込んだフロアを調べていると、不思議な扉が見えた。
「何この扉……ノブも鍵穴も付いて無いじゃない」
「鉄で出来てるの?固いわね」
「拙者達の故郷にある、襖に似ているでござるなぁ……」
第3パーティの皆が鉄の扉を調べている間、第2パーティの面々は骨竜を仕留め、ドアと階段を発見。
手分けした結果、第1パーティの一行が22階にて謎のメモを発見した。
「今の掠れてたけど……あたし達の使ってた文字に似てたよな?」
「ええ、でも内容が良く分からなかったわね……」
「何かの計画がどーの、だった気がするんやけど……」
ソードマン・リィやパラディン・ミリディアナ、メディック・アーリィが相談する中。
「……?」
レンジャー・メロディは一行から僅かに離れた青年とモリビトの少女の会話を聞き取っていた。
「やはり此処は……ならば」
「何か、知っているのか?」
「……ユミルになら話しても良いか……此処は俺の、生まれた国だ。
……正確にはその、成れの果て」
「お前、まさか樹海で生まれたと……!」
ユミルが勢い良くメロディを睨み付け、二人が沈黙した。
……だが話の内容に頭が着いていかず、茫然自失だったメロディ。
気付いた時にはパーティは上の階へと戻ろうとしていた。
後に続こうと歩き出した際にそっと、しかし確かな殺意を込めユミルが囁く。
――――喋れば、命を貰う、と。
そうして微妙に雰囲気が固いまま、上の階にて合流、先へ進むドアを開けた。
――――そうして、隣の建物へと移る一本の太い樹木の上。
恐らくギルドの殆どの者が想定していなかった――残りの一部にはもうか、という――邂逅。
そして明かされる真実の欠片と……互いに譲れぬ物を掛けた戦闘。
そして、どれ位の時間が経ったのか……膝を付いたのは、あちら側。
実力を認め、何かの鍵だろうか、薄い板状の物とその身に纏っていた防具を残し。
その場を後にした相手を何とも言えぬ気持ちで見送る一行。
「カードキー……セキュリティでもあるのか……それともエレベータの認証か……?」
青年の呟きを誰も理解出来ないまま、今は先へ進む事に決めた。
そうして建物内を巡り、鉄の扉と部屋――青年はエレベータ、と言っていた――を起動させ。
最下層……25Fへと辿り着いたのだった。
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