「へっへー、今日もお仕事成功っと……いやあ、俺って才能あんのかねー」
金貨の詰まった袋を手に意気揚々と戻ってきたのは元ならず者の男性・バージ。
鉱脈探索の依頼を幾度もこなし、成功率もなかなか。本人も気に入った依頼らしい。
「ん、ようロミ。ケガはもう良いのか?」
彼が庭先にて誰かを待っている様子の少女に声を掛ける。
その声に振り向いたのは、少し前にやって来た樵の少女・ロミ。
彼女も冒険者として依頼を受け……三ヶ月にして大怪我を負い、引退していた。
「あ、お帰りなさいバージさん……その、大変なんです。実はロラン君が……」
と、今だ包帯を巻いた顔で落ち着かなそうに喋る。
どうやらこの家に暮らす家族の一人に何かがあったらしいが……。
「あ?ロランが?一体何があった?」
思わず凄みの利いた声で聞き返した所に、一人の男と少女がやってきた。
背に先程名の出た少女の様にも見える少年・ロランを背負っている。
彼の名はハーグ、この家の家主であり元冒険者である。
傍らに立つのはメトセラの魔女を自称する女性・セラ。どちらも表情が硬い。
「依頼でな……連戦の最後で、親玉に良い一撃を貰ったらしい。
これからしばらく、セラの婆さんが治療に入る……邪魔するんじゃねえぞ」
普段は軽口の彼の声に含まれているのは、真剣な響きだけ。
その様子に彼らは押し黙り、道を空けるしかなかった。
数日後、治療は何とか成功し彼は一命を取り留める……が。
その時一騒動在ったのはまた別の話である。
一方その頃。
「ああ、退屈だわ退屈だわ……そろそろ歯応えのある敵が出てきて欲しいわ……」
ロストと名乗る少女は情熱を失っていくのを自覚していた。
依頼の金額がやたらと高かった為に強敵相手かと心躍らせたものの、相手は単なるミイラ。
気落ちしながらも淡々と雷の魔法で敵を消し炭に変えたが……実に退屈だった。
何とか今日の依頼でやる気は戻ったものの、始めた頃に比べれば……。
「三割って所よね……はぁ。次の依頼は……ん?」
そうぼやきつつ依頼書を見ると、巨大な怪物を森に退治しに言って欲しいとの依頼。
その森にはワイバーンが出るという噂を聞いていたが、もしかして……?
「良いわね……これでワイバーンが出て、そいつを倒せば本家にも武勲を誇れるじゃない!」
少女の瞳に炎が燃える。しばらく仕舞い込んでいた魔法の盾と杖を取り出した彼女。
さて、どうなるか……?
そして一時期の重い空気が解消された屋敷では、新たに家族となった二人が話を聞いていた。
新たに現れたのは男女それぞれ一人ずつ。
「その、お嬢様の様子を見て来いって本家から……」
そう言って頭を下げるのは、本家で牧童を務めていた元羊飼いの少年・マルコ。
弓の心得こそ多少はあるが、精々兎や鹿を狩るのが精一杯と言った様子である。
「ふふ、私を呼んでいるんだよ。あの躍動と興奮が形作ってくれとっ!」
何処か芝居めいた口調で喋る女性は、アーシャと言う20代中盤の女性。
彼女は自称芸術家であり、その絵や彫刻はそれなりに良い評価を受けているのだが。
「やはり実際に見てみないと、本物の躍動感などは味わえないからね」
そういって、彫刻刀を片手に冒険者になった変わり種の女性である。
無論、彼女も戦闘の腕などからきしであり、大ネズミさえ一撃で仕留められなかった。
大所帯となりながらも、まだまだこの家に賑わいが絶える事は無さそうであった。
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